今日は「太陽電池の現状と今後の動向」というタイトルで、東京理科大学大学院修士1年の中込勝也さんにお話をいただきました。
民主党が二酸化炭素25%を掲げるなど、エコロジーへの取り組みがますます盛んになる今日この頃。エネルギー政策として本命視されている太陽電池の、現状と今後を分かりやすく説明して下さいました。
そもそも、太陽電池とは太陽のエネルギー(光)を電気に変えるものです。原理は少し難しいですが、要するに「電気」を「光」にする蛍光灯の逆のことをする、と考えてもらうと良いかもしれません。
太陽電池といて使われる物質は、現在は90%以上がシリコンです。半導体としても使用され、70年以上の歴史を持つため、成型法などのノウハウが蓄積して扱いやすいからです。
しかし、シリコンは加工に手間がかかることから供給が追いつかず、価格が高騰し、太陽電池の普及を妨げているという側面があります。
そのため、シリコンに代わる太陽電池が現在、盛んに研究されています。
代用としては、化合物系、色素増感太陽電池が主に上げられています。
太陽電池を決定づける特性としては、価格、エネルギー変換効率、寿命があげられます。
現在のシリコン型は、エネルギー変換効率は15%程度と現状ではかなり高い方ですが、理論的にこれ以上の上昇は見込めません。また、先程述べたように価格が高めです。寿命に関しては20年程度とそこそこの長さを有しています。
金属化合物太陽電池とは、シリコンに代わって何種類かの金属原子を混ぜ合わせてそれに近い特性を出すというものです。ちょっと専門的になりますが、シリコンは原子の一番外側に4つの電子を持っています。原理は省略しますが、4つの電子を持っている元素が、半導体に、そして太陽電池になります。しかし、そのシリコンが少し使いにくい。
そうしたときに、3つの電子をもつ元素と5つの電子を持つ元素を半分ずつ混ぜると、4つの電子を持つものと同じ働きをするのです。
そういう原理で生まれた太陽電池に、GaAs(ガリウムヒ素)電池があります。これはシリコンに比べて理論的な変換効率が高く、代用品として期待され、実際に宇宙空間で太陽電池として使用されています。しかし、レアメタルを使用しているために価格が非常に高いという欠点を持っています。
そこで、安価に作れる太陽電池として、色素増感太陽電池が現在盛んに研究されています。色素は基本的に有機物であり、非常に安価に合成できます。また、合成によって様々な分子を使えることから、理論的な変換効率の上昇も期待されます。
しかし、有機物であるために壊れやすく、寿命が短いと言うのが現在の課題です。さらに、液体であるために蒸発してしまうという物理的な問題もあります。寿命を向上させ、ゲル状なと産業的に取り扱いしやすい形状にしていくことが今後期待されます。
もし、ゴビ砂漠全部に太陽電池を敷き詰めれば、世界中のエネルギー需要に匹敵する発電量を得られます。地球上の表面積の0.3%程度…それがすごいことなのかどうかは分かりません。しかし、再生可能エネルギーの中ではずば抜けた期待値を持っていることは確かです。
原子力発電などの安定した供給源と併用しながら、クリーンエネルギーの割合を増やしていくことが必要でしょう。
現在、太陽電池市場での日本のシェアは数年前に比べてがた落ちしています。太陽電池発電の電気を手厚く買い取る制度が制定されたドイツなどで急速に太陽電池が普及しているため、また政府の支援が貧弱な日本がそこに追いつけていないのです。
太陽電池がここまで広まるとは思っていなかったため、設備投資が遅れたことも一因にあるそうです。
日本の技術力で、次世代の太陽電池ではぜひ巻き返してほしいと思います。
そのほかにでたトピック
スマートグリップ:アメリカで研究されているらしい。あっちこっちで散発的に発電されている太陽光発電の電気をコンピュータで一括管理して、うまく供給していく方法
直流電流:交流電流に比べて輸送時のロスが少ない。また、送電を直流で行えば、電化製品は直流電流を使うため、交流から直流にする際の変換ロスもなくなる。いろいろな危険が指摘されるためにまだ実用化はされていないが、技術的課題が克服されれば将来的には直流電流が送電されるかもしれない
宇宙空間の発電:「宇宙に太陽電池をおいて発電させて、それを地球に送れば?」と。マイクロウェーブで送電するために軍事転用ができて危険、ということで研究はなされているけれども、実用化には反対意見が多いそうです。