今回は、法学部5回生(?)で、パチンコ=チェーンストア協会の論文で優秀賞を取ったという藏本さんが、デジタルコンテンツ論=パチンコ!について熱く語ってくれました。前半はコンテンツ全般に関する話、後半は「コンテンツとしてのパチンコ」について、非常に分かりやすく語ってくれました。コンテンツ全体の話で印象に残ったのが、コンテンツの「次元」に関する話。少数・低コスト・廉価のものを低次元、多数・高コスト、高価なものを高次元として、文字・画像<音楽<映像<ゲームの順に高次と考えると、R&DでなくC&R(Creation&Reputation)が可能になるためとりあえずつくってあとから評価するという構造が成り立ち、多様性市場になるという話がとても興味深かったです。
そして、パチンコ論。近年著作権料等の関係でパチンコ機は高額化、パチンコホールの倒産、大型化が進み、売上に見る産業規模の縮小など厳しい状況にあるパチンコ業界ですが、先ほどの分類で最高次・下流(拠点サービス、アーケードゲームが99%)に位置するゲームコンテンツで、日工組に入っていなければ生産できない超規制産業という特徴を持つようです。そして、注目すべきは近年急速に進んでいる、マンガ・アニメ・映画・ゲームといった他コンテンツとの関わりで、何か1つで成功したコンテンツをアニメ化、ドラマ化、パチンコ化と他でも使っていくマルチユースが盛んになっており、アニメ製作会社がパチンコグループに入るケースも見られるようです。分かりやすいところでは、みなさん耳馴染みのエヴァのあの曲がパチンコ効果でJASRAC銀賞をとり、また、加山雄三、天童よしみ、美空ひばりなどといった歌手の楽曲がパチンコに使われることによる販促効果が出ているなど、パチンコと他コンテンツとの関わりが重要になっています。他にフィギュア、アニメのタオル等のグッズ販売といったものに加え、広告業界にとって重要な存在になっているようです。その中で、今回の発表の中でも非常に興味深かったのが、パチンコの課題として、作り手と打ち手との距離の乖離、批評の不在とクリエイターの不在をあげていたことです。パチンコに関する批評としては、「パチンコと日本人」という本にパチンコを通した社会批評が見られるものの、雑誌等で扱われるのは攻略法ばかりに終始し、他コンテンツに見られるような批評がされていない、といった視点にははっとしました。パチンコのゲーム性(表現の制限)を視野に作品の面白さを探る営みが作り手と打ち手の距離を決めるのでは、とのことでした。表現可能性に関する考察として、パチンコは無限ループで世界は終わらないものであり、また正義が勝つとは限らないことが従来の物語愛好者がなじめない一因になっていると考えられるとのことで、エヴァは負ける演出がつくりやすかった点でパチンコとの相性が良かったのではないかという見解にも興味をひかれました。今後、パチンコはどこへ向かっていくのか。現場で打ちながら考えてみたいと思わされる発表でした。