今回は、BS番組での生放送を終えてという題で、以前テレビ局に勤務し、現在東京大学大学院情報学環に所属する石塚さんが、最近ご自身が関わった番組の映像を用い、カメラワーク等の専門的な話をするとともにテレビの未来について思うところを語ってくれました。
石塚さんは、テレビ局時代にハンディカムを使うような番組を作ってきました。具体的には、貧乏人を回る番組、テレビチャンピオン、ぶらり途中下車の旅など、一般の大学生でも作りやすいようなものを作っていました。また、高校時代から50万もするようなカメラを回していて、また大学時代にNHKの埼玉局でアルバイト、日本テレビのインターンにも参加していたなど、人一倍テレビに愛着を持ち、積極的に関わってきた人です。
ただ、一分間スピーチの「自分がやってみたいというようなコーナー企画」というお題に対しては厳しい意見がいくつも見られ、発表も、現在テレビ局が増えているものの、テレビの機械は値段が高く、種類が多いといった問題があり、デジタル化を機に、pay per viewにあっさり切り替わるではないか?という、テレビの将来に対して批判的な視点から話に入っていきました。
そして、大学発で何かできないかと期待していると語る石塚さんは、Pet博というイベントで2時間生中継した際の映像を実際に見せ、今後どういう番組・映像を残すべきかという視点を中心にお話ししてくれました。
ところで、TwellVというチャンネルをみなさんは聞いたことがあるでしょうか?今回は参加者のほとんど(全員?)が知りませんでした。このTwellV、実はBSにおいてディズニーとBBCに勝って放送チャンネルを確保していると聞いて、すごい、と思ったのですがまだまだ番組が弱いそうです。通販番組が大半を占め、あとは宝塚などの番組を買っているというのが現状。新興テレビ局だと番組案内にもあまり載ってこないということなので、知らなかったのも無理はないなと思いました。
2011年から、アナログ、デジタルが一緒になり、競争はより激しくなります。その中で今、そのチャンネルの認知度を上げる効果もあるため生放送が増えています。CMについては、BSはもともと広告費が安いそうです。また、番組の構成についても放送法的にある程度バランスが求められるということで、今回の企画をしてみたということでした。
ここから、Pet博での番組作りの話になります。制作は業界で一番力があるNHKエンタープライズに入ってもらい、ゲストの選定はペット好きのタレントの中から犬派、猫派で選別、強面でも猫好きな田中さんを選ぶなどの工夫をしています。これは授業のテレビ撮影の実習で行われました。石塚さんだけでなく三文会に参加している新宮さん、風間君が実際に映像を撮ってきたということもあり、ここからしばらく実際の映像を見ながらの話となりました。映像の様子を言葉にするのは難しいですが、ペットのイベントをやっている大きな会場の中を歩いて気がついたことをコメントしながらまわるユルい感じでした。
キーワードは、寄りと引き。撮るときは、引きで全体を撮る・商品などに寄るなどをきちんと組み合わせる必要があると、倍率をうまくコントロールして撮ることの重要さについて強調していました。後からテロップを入れるのは大変であるため、看板などは、寄り、引きを入れて撮るということです。また、撮影しながら、コメントを入れていくわけですが、そのコメントのふさわしいテンション、映像との間合いなど、難しそうだなあと思いながら見ていました。撮影を終えて、ペットが好きじゃないと楽しめないイベントという難点はあったものの、こういう個人が作ってきた物をわいわいやる方が面白いかもしれないと感じたようです。また、技術的な面からは、雑音を拾うので集音マイクをつけられるカメラがよいと言っていました。こういった小さな番組では視聴率では出ないので接触率という数字を出すくらいの状況だそうですが、それでも維持されるだろうと言っていたのは印象的でした。(宮里藍のゴルフ中継に関しては好調だそうです。)
三井物産100%の会社ですが、番組制作費はそれほど掛けていないそうです。30人規模の会社で、いろいろと提案できるという話を聞いて、非常に期待が持てると思いました。今回のペット博の番組は初めての制作であり、企画を決めてから2ヶ月掛けて制作するというどたばたの中で進んだ企画だったそうです。通常、2ヶ月前には企画は詳細がFIXされていて企画に合わせてスポンサーをつけていくのが理想らしいです。次は3ヵ月後にある程度大きいものをやるということなので、楽しみです。
最後に、テレビ・メディアの現在、未来に関する話となりました。テレビ業界では、今BSが右肩上がりの一番良い状況にあり、非常に厳しい状況にも関わらず局数が増えています。面白いものを作れる人は残っていく、という言葉は現場にいる人だけに説得力がありました。そして、さらに興味深いことに、(既存のテレビではなく)「ここ」に面白いものがあっても、今はそれを伝える手段がないのではないか?と言っていました。そこで、twitterなどが今後大きな影響力を持つはずなのに、テレビ局側がいまいちtwitterをよくわかっていないという厳しい指摘もありました。例えば某テレビ曲が2ちゃんねる的なノリで紹介番組を作って失敗したそうですが、脚本の人選から問題があったと言っていました。Twitterは140字という適切な分量から質問に使え、FAXよりもリテラシーが高い人も多く、無料ということが支持されるということでした。また、twitterは今までのメディアと違った使われ方もされ、今では就職活動においてフォロワーの数で足切りするような採用方法もあるそうです。
ところで、今のテレビの競合は、どこなのでしょうか。テレビができた当初競合と思ったのは、映画業界でした。新聞業界は産みの側なので、だめな人材をテレビ業界に送り込んだので、安心していましたが、テレビ業界は躍進しました。そして今、次の時代が来ようとしています。今回の発表の中でも最も印象的だったのが、ここの議論の中で出てきた「テレビ」という言葉で表現すること自体が古い、と石塚さんが言っていたことでした。地デジよりも、Ustreamで盛り上がる時代が来るのか。今後、「テレビ」と呼ばれていたものはどのように姿を変えていくのか。今後数年の間に起こる変化が見逃せないと思いました。