9/2 理系学生一日体験。東大の研究室って何やってるの?

今日は、このブログを担当しております、東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻修士2年の奥村が「M12L24球状錯体内部におけるケイ素官能基の集積と反応」というタイトルで発表致しました。
「ガチ理系!」をテーマに、修士論文発表の内容を発表し、他分野の研究を体験してもらおうと思いました。

内容としては、
1、+(プラス)と?(マイナス)は、磁石のようにくっつき合う
2、「分子」は、それぞれ+や?を持つ。
3、その組み合わせで、分子同士をくっつけ合うことができる。
4、その原理を使って、好きな形に分子をくみ上げられる
5、そのくみ上げた分子を使って、役に立つことをする
6、その中で私は、くみ上げた分子の中に材料を入れて、くっつけることで新しい形の材料をつくる研究をしている
というものです。

文系の方にも参加していただき、一生懸命聞いていただけてとてもうれしかったです。
「その技術が世の中に広まらないと、文系の人間は原理を理解しようとはしないが、こういう風に芽の段階で原理が分かってよかった」という感想をいただけたのが印象的でした。

今すぐ役に立つのかどうか、それは分かりません。
そんな研究に何十億も税金を投じるな、と言われることもあります。
確かに、企業で行われている研究に比べれば、実用化へのプレッシャーはかなり低く、自由度が高いので、その分よく分からない、となるかもしれません。
ただ、利益が必要な企業ではできない、「無駄な」研究を進めていくのも大学の役割ですし、無駄の山が積み上がって歴史的な成果が生まれることもあると思います。

工学部は、実用性を求めない理学部と、実用命の企業の間に位置する、難しい立ち位置だと思います。
企業と共同研究をするような研究室から、何の役に立つか分からない研究まで幅広く存在します。
やっている本人でも、それを不思議に思ったり歯がゆく思ったりもします。
しかし、どんな研究も役に立つかどうかは歴史しか分からないような気がします。
例えば、実用の代表で、すぐに命を救えるような薬を開発する研究でも、実際に役に立つ薬は何万分の一の確率でしか生み出せず、残りは「実用的な研究」から「無駄」になってしまいます。
逆に、ケータイに役立つことも知らずに「電磁気学」を確立した人もいた、というご意見もありました。

研究費、というのはわりとウケがよく、増えれば増えるほど文明国の証だ、研究費をケチれと言うなんて教養がない人間だ、というイメージがあるような気もします。
確かに、研究費や教育費をケチりだしたら先進国として危ないと感じます。
しかし、だからといって無駄にばらまけば良いものでもないのです。
90億の予算、博士学生への給料、そんなものよりももっと必要な、お金では解決できない課題が日本の大学院にはある気がします。
研究プロジェクトがどうのと机上の空論をする前に、考えなければならないもっと大きい問題があります。

研究紹介では、きれいな部分だけが見えてきます。
今日は、その部分だけお話ししました。
ですが、きっとどこの世界でもそうですが、見えてこないところにこそ考えるべきことがあると思います。
「この研究は何の役に立つの?」と思ったら、その次にもう一つ、何か考えてみていただければ、科学技術立国日本の未来が明るくなるような気がします。

tomoyo について

東京大学工学部応用化学科4年、藤田研究室所属 有機系の研究室で、主に錯体化学を扱っています。 柏葉会という合唱サークルに所属しています。 よろしくお願いします♪
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9/2 理系学生一日体験。東大の研究室って何やってるの? への1件のフィードバック

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