今回は、「コラボレティブオフィスという仕事のスタイル」という題で、三文会を率い、株式会社ロジトーイ代表取締役社長である野間さんが、今後の社会で活躍していくうえで非常に重要になるであろう「コラボレーション」の意義と方法について、21世紀という時代の俯瞰、工業化社会~高度経済成長期の振り返り、グローバル経済とは、そして大企業と中小企業との比較などを通じて語ってくれました。
まず、21世紀という「面白い」時代というタイトルのスライドで説明してくれた今の時代の捉え方がとても印象的でした。メディアは連日不景気を煽るようなニュースを流し、どこか閉塞感に包まれている現在の日本。それは経済構造の変化によるものであり、工業先進国の先行者優位は薄れ、帝国主義時代の遺産はなくなりつつあり、既得権益層にとってはつらい未来が待っているものの、それは同時に可能性に満ちた楽しい時代であるということでした。そもそも工業化社会とは、何だったのか。それは、衣類等の効果で手に入りにくいものが安くなる、ICチップのような新技術によるものが普及する、等によって「生活の変化」が起こり、また大量生産による合理化と物流の変化による商圏概念・生産単位の変化といった「ビジネスの基礎条件の変化」が起こった時代でした。そして、技術の普及とともに所得比=消費比=人口比という構図ができあがり、日本は新しい生活のスタンダードに向かって一気に消費が伸びていく高度経済成長を体験しました。一方で、現在では中国がまさにそのような高度成長の中にありますが、国が大き過ぎるため、海岸から内陸へ徐々に成長のピークをずらしているという説明が、印象に残りました。また、現在のグローバル経済について、「地球を中心とした鎖国」と表現していたことも印象的でした。
そして、話は、このような時代だからこそあらためて考える必要がありそうな、大企業の強みと弱みへと移ります。強みとしてはやはりその資本力、人的資本力があげられ、大規模設備を有し、営業力・パブリシティーに優位性があり、事務処理能力・調査力が強いといった話でした。弱みとしては、株主の存在によりリスクをとる経営をしづらく、また活動の方向性が決まっているために組織が硬直化しやすいといったことが挙げられていました。就職活動中の学生たちにとっては特に意識すべきところだったように思います。
次に、いよいよコラボレーションの実践の話へと移っていきました。1社だけでモノをつくることはできない、コラボレーションが必要な現代。そんな今、注目すべきコラボレーションが行われている場所。それが、野間さんが率いるロジトーイも所属している、ちよだプラットフォームスクエアです。竹橋近郊に位置し、現在予約待ちになるほど人気のこの施設では、現代版「家守構想」のもと、設立2年にしておよそ220社、600人が働いています。実際の写真を交えて施設内の雰囲気を説明してもらいましたが、受付にはコンシェルジュがかまえ、中の空間は全体的にオープンな印象です。仕事に使えるスペースとしてはとにかくいろいろなブースがあり、屋上庭園、コンセントレーションルームといった施設もありと、いろんな環境を楽しんで、気分を変えながら仕事ができそうな雰囲気が伝わってきました。
そして、コラボレーションを促進するためのアクティビティーとしては、ここでこんなことをやろうと話すタウンミーティング、そこから派生したランチミーティング、文具の共有、朝コンサート、近隣のおいしいものを食べる・忘年会を企画する等の活動を行うちよだグルメクラブといったものがあり、とにかく交流の機会を多く設けています。他に、きずな創造スペースという名称で、各社の情報を掲示できるスペースも目立つ所に設けられていました。また、非常に特徴的なものとして、「未来来(みらくる)」というものがあります。詳細はオフレコとのことでしたが、これは仕事の案件のうち、自分の会社だけでは解決できないものを同施設内の他の会社に相談するというものです。例えば、アパレル系の会社が子供服新ブランド提案にあたって、他の会社に相談するなどの動きがあるとのことで、施設の特性をうまく活かしたとてもおもしろい仕組みだと思いました。ここで再び現在の企業像の話しがありましたが、一番肝心なアイデアを決める人が不足し、考えることを外にまかせる動きがあるようです。そして、アイデアとは、組み合わせる力であり、それを促進するのが、こういったオープンな空間を有するコラボレーション型オフィスであるとのことでした。バラバラな業種の数多くの会社が一か所に存在するために、隣に全く違う業種の人がいる、自分の知らない概念を持っている人がまわりにたくさんいる、という状況が頻繁にできる環境であることが、アイデアの創出につながる良いコラボレーションを促進するとのことでした。
こういったコラボレートが、どんな未来を切り開いていくのか。今という「楽しい」時代を生きる当事者して、望ましいコラボレートの実現に関わり、新しい何かを生み出していきたいと思う気持ちになった発表でした。就職活動中の学生、就職活動を控えている学生たちにとっては特に、自身の働き方を考える上でも非常に参考になる話だったと思います。