[2015年五月祭] 知識をつくるのは「企業」か「共同体」か ――『知識創造企業』を読む

5/16(土)9:00~10:00

三文会事務局OBの熱川(にえかわ)と申します。

5月16日土曜日、東京大学第88回五月祭の三文会では、野中郁次郎一橋大学名誉教授と、竹内弘高・米ハーヴァード大学教授とが1995年に発表した『知識創造企業』を紹介します。

野中、竹内両氏は本書で、形式言語で表すのが難しい「暗黙知」と形式言語で表せる「形式知」との変換を組織として行う「組織的知識創造」が1970~1990年代の日本企業の強みと結論しました。当時、不可解とされていた日本企業の好調を説明した本書は、「日本から世界に向けて発信された『経営理論の真のフロンティア』」(369ページ)と評されました。1980年代後半からの不況について両氏は「日本企業がこの不況を乗り越えたあとは、これまで以上に強くなると我々は断言する」(2ページ)と語っています。

2010年代の日本企業は、2人の大家の「断言」の通りになっているでしょうか。発表者は経営学の専門家でも経営者でもありませんが、1990年代以降の研究、特に個人の関心や熱意に着目する「実践の共同体」論を参照しつつ、この古典の内容を追いたいと思います。

【一分間スピーチのテーマ】
「組織的知識創造」の経験はありますか? あるとしたらその経験はどのようなことですか?

「組織的知識創造」の例:
– マツダでは、プロジェクトメンバーが米国を旅行し、米国での自動車の走行から得た体験(暗黙知)から本格的スポーツカーRX-7のコンセプト(形式知)を創造した
– 松下電器産業(現パナソニック)本社は、勤務時間を年間1800時間に短縮する際に、「実験的に1カ月に150時間(1800÷12)働いてみたらどうか」と各部署に助言し(形式知)、年間1800時間の勤務を習慣付けた(暗黙知)

【発表者プロフィール】
熱川豊紘(にえかわ・とよひろ)
1986年和歌山県生まれ。東京大学文学部を経て、2012年に同大学大学院学際情報学府修士課程を修了。専門は科学・技術政策。在学中、財団法人東京大学新聞社(現、公益財団法人)に勤務。三文会事務局に出向。現在、情報通信企業に勤務。

【主な文献】
Nonaka, Ikujiro and Takeuchi Hirotaka, 1995, The Knowledge Creating
Company: How Japanese Companies Create the Dynamics of Innovation, New York: Oxford University Press.(=1996, 梅本勝博訳『知識創造企業』東洋経済新社.)

 

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